EIGRPの全体像
EIGRP は、DUAL により最適経路と条件を満たす予備経路を管理する Cisco 由来の IGP。
EIGRP は Enhanced Interior Gateway Routing Protocol の略で、主に同一組織内のルーティングに使う。Cisco 由来のプロトコルであり、現在は仕様の一部が RFC 7868 として公開されている。
何のためにあるのか
Section titled “何のためにあるのか”EIGRP は、内部ネットワークで動的に経路を学習するために使う。
主な目的は次のとおり。
- ルータ同士で経路情報を自動的に共有する
- 障害時に高速に別経路へ切り替える
- 帯域や遅延などを使って経路を評価する
- OSPF より Cisco 機器中心の環境で扱いやすい構成を作る
基本的な動き
Section titled “基本的な動き”1. Hello パケットで隣接ルータを発見する2. Neighbor 関係を形成する3. 経路情報を交換する4. DUAL で最適経路を選ぶ5. 条件を満たす予備経路を Feasible Successor として保持する6. 最適経路をルーティングテーブルへ入れるEIGRP は経路が変化したときに必要な情報をやり取りする。常に経路表全体を定期的に送り続けるプロトコルではない。
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| Neighbor | Hello により認識した隣接ルータ |
| DUAL | EIGRP の経路計算アルゴリズム |
| Successor | 宛先への最適経路として選ばれた次ホップ |
| Feasible Successor | ループしないと判断された予備経路 |
| Feasible Distance | 自分から宛先までの最小メトリック |
| Reported Distance | 隣接ルータが広告してきた、その隣接ルータから宛先までのメトリック |
| Feasibility Condition | 予備経路として安全か判断する条件 |
SuccessorとFeasible Successor
Section titled “SuccessorとFeasible Successor”EIGRP では、最適経路として使う次ホップを Successor と呼ぶ。
条件を満たす予備経路がある場合、それを Feasible Successor として保持する。
R1 -> R2 -> 宛先 SuccessorR1 -> R3 -> 宛先 Feasible SuccessorFeasible Successor があると、Successor が使えなくなったときに、新しい計算や問い合わせを待たずに切り替えられる。
EIGRP のメトリックは、デフォルトでは帯域幅と遅延をもとに計算される。K 値の設定によって信頼性や負荷なども使えるが、通常は帯域幅と遅延が中心になる。
| 情報 | メトリックとの関係 |
|---|---|
| Bandwidth | 経路上の最小帯域。デフォルトで計算に使う |
| Delay | 経路上の遅延の合計。デフォルトで計算に使う |
| Reliability | K 値を変更した場合に計算へ使える |
| Load | K 値を変更した場合に計算へ使える |
| MTU | 経路情報には含まれるが、複合メトリックの計算には使わない |
MTU は show コマンドや再配送時の seed metric の指定に現れるため、メトリック計算要素と誤解しやすい。しかし、MTU と hop count は複合メトリックの値には加算されない。
EIGRP のメトリックは OSPF の cost とは別物である。OSPF のように単純な cost の合計として考えると誤解しやすい。
よくある誤解
Section titled “よくある誤解”| 誤解 | 実際 |
|---|---|
| EIGRP は単なる距離ベクトル型である | DUAL を使う高度な距離ベクトル系の IGP と考える方が近い |
| Feasible Successor はただのバックアップ経路である | Feasibility Condition を満たす、ループしないと判断された予備経路 |
| EIGRP は経路表全体を定期的に送り続ける | 変化があったときに必要な更新を送る |
| OSPF の cost と EIGRP の metric は同じ感覚で扱える | EIGRP は帯域や遅延などを組み合わせた複合メトリックを使う |
| MTU が表示されるためメトリック計算にも使われる | MTU は経路情報に含まれるが、複合メトリックの計算には使われない |